
アフガニスタンの音楽
アフガニスタンは古代において、東半分は古代インドに属し、西半分は古代ペルシアに属したため、昔からその豊かな複合文化は「シルクロードの交差点」と呼ばれている。ガンダーラからアフガニスタンにかけての仏教遺跡に残る仏像は、古代ギリシア彫刻の影響を受けたことでも有名である。 アフガニスタンの二つの公用語の一つダリ語は、現行のペルシア語よりも古代ペルシア語に近いと言われ、音楽や詩の形態にもそれが現れている。また中世にはティムール朝の都も置かれ、モンゴル軍の南下に伴っては、インド方面への橋頭堡的役割を果たすなど、歴史的に重要な役割を課せられてきた。 中部山岳地帯は、昔インドで捕らえた人々を連れてきたら、誰も無事に越えられなかったという事から「ヒンドゥークシュ山脈」と名付けられているが、この山並みに隔てられ東西南北で文化がやや異なる。これに合わせて民族音楽にも地方差があり、インドに近い南東部は首都カーブルもあるので、パシュトー語もダリ語も話され、音楽も総合的。若干インド古典音楽の影響が強いとも言える。 南部のカンダハール地方はパシュトー語の中心地で、荒々しくも心優しい歌が、素朴な民族楽器の伴奏で歌われる。古都ヘラートで有名な北西部は、ペルシア音楽の要素も持っている。中部のハザーラジャートには、モンゴル軍の末裔と言われるハザーラ人の独特な音楽がある。北部の聖地マザーリシャリーフでは、ペルシア系音楽と中央アジア系音楽の要素が伺える。これらの音楽における民族の特徴は、楽器にも現れている。 三味線の遠い親戚であるラバーブは国民的楽器だが、金属弦の弓奏楽器サーリンダーと、両面太鼓のドール と組めば、完璧に南部パシュトー音楽楽団となる。有名なインドの弦楽器シタールの先祖であるタンブールは、北部で最も重要な弦楽器で、ペルシア系片面太鼓ゼルバガリとの組み合わせで、幻想的な中世音楽を奏でる。本来インド音楽の楽器である古典太鼓タブラや、鍵盤楽器ハーモニウムは、アフガン楽器の癖を持ちながら全域に浸透している。